だしソムリエが教える、簡単しいたけ合わせ出汁の作り方

2020年11月27日

—目次—

  1. たったワンステップ!シイタケ屋がお勧めする和風だしの作り方!
  2. 作り忘れた時はどうすれば良いの?
  3. ところで、だし(出汁)ってなんだ…?
  4. 「だし」と「旨味」
  5. 干しシイタケは旨味成分の宝庫
  6. うま味調味料について
  7. 最後に…

 

こんにちは。へるしいたけ店長の山根です。さて、新型コロナウイルスの影響はまだまだ大きく、しばらく外出してないなあ、なんて方も多いのではないでしょうか。一方、結果的に料理にかけられる時間も増え、これを機に食生活を見直してみようという方もいらっしゃるかもしれませんね。

今回はそんな方の第一歩としてお勧めの、簡単だけど本当に美味しい「和風だし」についてご紹介します。

 

1.たったワンステップ!シイタケ屋がお勧めする和風だしの作り方!

<材料:1L分>

  • 昆布10g(鰹節でもよい。その場合は30g)
  • 乾しいたけ50g
  • 水1L

カンタン和風だしの材料の画像

<作り方>

「ピッチャーに材料を全て入れ、冷蔵庫に入れて10時間以上放置する」だけ!

これを常にストックしておくだけで、絶品お出汁がいつでも使えるようになります。

ポイントは以下の2つです!

① 2つ以上の素材を同時に使用すること。

2つ以上の素材を使用することで、より強い旨味を感じることができます(詳しくは後述します)。

② だし汁を使う際は調理過程で必ず熱すること。

乾しいたけの旨味成分グアニル酸は、水出しで出てきた成分が加熱段階で酵素の働きによって変化して生成されます。ただ、沸騰させてしまうと生成が止まってしまうので、ゆっくりと過熱して調理することをオススメします。

簡単和風だしの画像

(水出しした和風だし。澄んだ茶色をしています。ほのかに昆布と乾しシイタケの香り…)

<保管方法>

冷蔵庫でピッチャーのまま3日間は大丈夫ですが、使い切るのにそれ以上かかる場合は、製氷皿に入れて冷凍してしまうのがおすすめです。その際出し殻は取り除き、料理の具材として使われることをお勧めします。特に乾しいたけは最高の戻り具合ですので、是非料理してみてくださいね!

簡単和風だしを引いた後の乾しいたけの画像

<どんな素材を選べばよいか>

おそらく、乾物で出汁を取ったことのない方からすると、どんな素材を使えばよいのか迷われる方もいらっしゃるかと思います。私の個人的なオススメは下記の通りです。

① 昆布

「日高昆布」がオススメ。出汁の量はそれなりですが、出し殻も柔らかく食べやすいのがポイントです。ほかの昆布も良いですが、「早煮昆布」や「長昆布」は出汁を引くというより食用ですのでご注意を。

② 干ししいたけ

国内産の原木栽培品を強くオススメします。菌床物も出汁が出ないわけではないですが、旨味が薄い傾向にあります。原木栽培品であれば間違いないですよ。

③ かつお節

よく販売されている小分けパックの鰹節ではなく、「厚削り」か「花かつお」(おすすめは厚削りです)を使ってください。

 

2.作り忘れた時はどうすれば良いの?

水出し和風だしを作り忘れた場合も慌てないで。上記のだし食材を調理の際に少量ずつでも直接入れれば、それなりに出汁が出てきます。調理時に干ししいたけを戻すポイントについてはこちらの記事もご参照ください。あくまで家庭料理。ハードルは低くいきましょう。

 

3.ところで、だし(出汁)ってなんだ…?

さて、絶品和風だしのレシピが分かったところで、これからの食生活をもっと豊かにしたい!という方向けに、ここからは出汁について触れさせていただきます。レシピ本などを見ていると、時々「だし汁○○ml」という言葉が出てきますよね。でもなんだかこの表現、ピンとこないことないですか?

そもそも、だしとは何でしょうか。市販の白だしも出汁?だしパックで煮だしたのも出汁?でも、それぞれ入っているものは全然違いますし、そういうものを使わない料理でも「だしの旨味が効いていて…」なんて表現が使われたりします。そう思うとえらくあいまいですよね。

私は個人的に「だしソムリエ」という資格を持っているのですが、そのテキストに記されている「だし」の定義は「素材のうまみを引き出したもの」かつ、「調味料で味付けされる前のもの」とされています。漢字でも「出汁」と書きますが、まさに読んで字のごとく、素材から出す汁のことですね。

したがって、だしは味だけでなく風味や香りなども含んでいて、素材それぞれで全然違う特徴を持っています。だからこそ料理に深みや特徴を与える、いわば土台となるものと考えることができます。

ちなみに私たちシイタケ屋を含めて、多くの方は出汁を料理から独立して取る(引く)ものと考えがちなのですが、例えば鍋料理に入れる具材から出る旨味や風味なども広義的には「だし」と定義づけられます。

 

4.「だし」と「旨味」

だしについて語る際に避けて通れないのが「旨味」の存在です。旨味とは、出汁が持つ様々な要素の中でも根幹と言ってよい重要なものです。この旨味、実は甘味・塩味・酸味・苦味と並んで「基本味」と呼ばれる「味」の一種です。でも正直、「甘味」とか「塩味」などと比べると、「旨味」ってどんな味だか想像しづらいですよね。

どちらかというと、旨味はその単体を味わうというよりは、そのほかの味をより感じやすくしたり、より食欲をそそりやすくしたりといった「引き立て役」的な位置づけがなされています。特に塩味はこの効果を強く受けているため、旨味をうまく利用することで、塩の使用量を抑えることもできます

一般的に出汁の旨味成分として有名なのは「グルタミン酸」「グアニル酸」「イノシン酸」の3種で、この三種の成分は通称「三大旨味成分」とも呼ばれています。大まかに、「グルタミン酸」は有名な昆布の他、野菜をコトコト煮詰めるなどしても出てくる旨味、「グアニル酸」はキノコを中心とする旨味、「イノシン酸」はカツオや肉類といった動物性の旨味と分けることができます。

この三大旨味成分、グルタミン酸と同時にグアニル酸かイノシン酸を口に含むと、舌にある味を感じる部分がより強く反応し、実に30倍程度も味を感じるということが分かっています。このあたりの詳しいお話は長くなってしまうので、また別の機会に触れることにします。

 

5.干しシイタケは旨味成分の宝庫

乾しいたけの旨味成分については多くの場合「グアニル酸」がクローズアップされます。上述の通り、グアニル酸を持つ食材として有名なのはキノコ類ですが、その中でも乾しいたけの含有量は他のキノコ類と比べて10倍以上含まれているとされています。

ただ、このグアニル酸も戻す条件によって抽出量が大きく異なるので、ここまでしっかり読んでくださった皆様には、最大限にグアニル酸を引き出す水出しをオススメします。

もう一つ、忘れてはいけない干し椎茸の旨味成分は「グルタミン酸」です。乾しいたけのグルタミン酸についてはほとんど知られていませんが、昆布に次ぐといってよいほど、グルタミン酸が多く含まれる食材なのです。

したがって、単体でもグルタミン酸とグアニル酸を多く含む乾しいたけは、きちんと戻すと強い旨味を味わうことができる優秀な食材なのです。

 

6.うま味調味料について

さて、ここまで食材から取るだしについて記してきましたが、「じゃあ市販の出汁ってどうなの?」という疑問がわく方も多いかと思います。

ここまで書いてきた通り、出汁は結構定義があいまいであるからか、実にいろいろな種類の商品が販売されています。これらには、単純にこれまで書いてきたような食材を粉砕してパックしただけのものもあれば、一見そう見えて、食塩や人工の「グルタミン酸塩」を添加した物、その他、旨味成分に食塩や醤油などの調味料で味をつけて販売されているものなどがあります。

これらのうま味調味料は確かに手間をはぶけますし、私もその存在をことさらに否定するわけではありませんが、天然素材からとった出汁は3大旨味成分以外にも、旨味や他の味を感じる成分が複雑に作用しあいますので、より深みのある味を感じることができます

また、個人的に一番違うと感じるところは香りです。私も実験してみたことがあるのですが、乾しいたけ・昆布・カツオのいずれの組み合わせでとったお出汁とも、市販の白だしとは全く比べ物にならないくらい豊かな香りがし、それ以来家庭ではほとんど自分で引いただしを使うようになりました。

7.最後に…

いかがでしたでしょうか。「だし」とだけ聞くとなんだか格式高いもののように感じますが、もともとは家庭料理に溶け込んでいたものです。この記事で少しでも皆様のだしに対するハードルが下がり、気軽に出汁を引くことに挑戦して頂ければ幸いです。